ヨガインストラクター資格をとりました

皆様ご無沙汰しております。blog更新もだいぶおろそかになってましたね。本日は久々に気合を入れて書きます。
実はシアトル生活立ち上げに区切りがつき、研究にも本腰を入れるとともにこの1年間の「修行期間」を有意義にすべく、ひとつ大きな挑戦をしておりました。それは、ヨガインストラクターの資格講習を受けるということです。

10年くらい前からヨガには興味がありました。そういえば最初は任天堂wii fitから始まったかもしれません。フィットネスジムで時折レッスンを受講したり、そこそこの頻度で朝夜にYoutubeを見ながらヨガを行ったりはしておりました。今回の決断はもちろん勢いで、という面も多分にありますが、私なりに以下のような戦略を立てました。

まず、拙著「消極性デザイン宣言」でも書きましたように、情報過多社会である現代は煩悩の世紀であり、SNSで渦巻く嫉妬や優越感の不毛な消耗戦、スマホに束縛・支配されている生活、そういったものに個々人が折り合いをつけないといけない、そのための方法論とは何かという情報科学研究者としての問題意識があり、瞑想をはじめとする東洋的思想がなにか考えるヒントを与えてくれそうだという予感がありました。
また、クリエイターとして創造活動をする上で自分の脳内の創造性のエンジンをどのように制御していくかという文脈で、運動や瞑想に言及する講演機会が増えてきました。もともと運動は好きですし、瞑想は独学で活用しておりましたが、瞑想を含め身体修養としてのヨガを一度きちんと学び、伝えられるようになることは芸の肥やしとして有益だろうと思いました。

次に、自分の英語の勉強として有益だと考えました。子どもたちや妻にアメリカでの英語教育環境を準備したのち、いよいよ自分もと思ったのですが、学期途中の中途半端な時期になってしまい、次にまとまった教育機会があるのは9月の新学期になってしまいます。夏学期の間にできる「なにか」を探していて、ヨガインストラクター資格講習に思い至りました。英語でヨガを習えば、さすがに鍛えられるんじゃないかと。いやー、実際に大変でした。おかげさまで「英語でヨガを教える」という、すごく偏ったスキルが養われました。pelvis = 骨盤みたいな、マニアックな解剖学的英語にも親しめました。
実は日本と遠隔でお仕事をさせていただいている方々には、恥じらいの気持ちから「しばらく英語の集中訓練コースに従事するので電話会議が通常の時間帯では難しい」とお伝えしていたのですが、すみません!実際のところはヨガ生活でした!でもすごく激しい英語の特訓であることには間違いは無かったので、ご容赦ください・・

それから、私はほそぼそ合気道を続けておりますが、合気道は体の柔らかさに加え、呼吸法が重要です。さすがにインド→中国→日本と伝わってきた禅の思想を組み入れた日本武道。ヨガとも多くの共通点があります。私の師匠の一人もヨガ的な概念を合気道の稽古に組み入れておられました。私は近頃はお世話になっている道場で時折指導をお手伝いさせていただくこともあるのですが、地に足がついた状態でヨガ的な概念を伝えられるようになれたら合気道指導としても有益だろうと思いました。また、いち実践者としても、姿勢を正したり、呼吸力を磨くためにヨガはよい出稽古になると思いました。(もちろん、体も以前より柔らかくなりましたよ!)

最後に、これは希望的な展望ですけど、勤めている津田塾大学において、なんらかのヨガ活動ができないかなと思いました。日常的に学内で運動する機会を増やしたいのですけど、昼休みなどに一人で合気道の稽古するのはなかなか厳しいです。木刀振り回したりしますからね。ヨガなら学生にも怪しまれず、もしかしたら一緒に参加してくれる人も現れたりして、健やかに生活できそうです。それから、情報科学科の学生を指導していて、ノートブックコンピュータの設置位置や解像度設定などが合ってなくて、すごくPC作業中の姿勢の悪い人が多いんですよね。君たちとコンピュータは一生の付き合いなんだから、健康と美容のために姿勢のよいPC作業の習慣をつけるべき、とよく言っているのですが、当の私も姿勢が悪いので説得力がまるでないのでした。これからはヨガの名のもと、学生とともに爽やかな情報科学人スタイルを育んでまいりたいと思っています。

そういうわけで、たまたま近所でリーズナブルな価格のトレーニングプログラムを提供するヨガスタジオを見つけたので、早速申し込んだのでした。早起きして猛烈に仕事して、昼ぐらいから夜遅くまでヨガ、という生活がしばらく続きました。休日も潰れるので、家族にも支えてもらいました。
指導を受けたのはアイアンガーヨガという流派で、私の知らない世界でしたが、私の肌に合うものだったので結果的にはとても良かったです。
何より師匠のRichard先生がヨガの愛にあふれており、情熱的な指導をしてくださったのでこの偶然の出会いに感謝しています。
ともにトレーニングを受講した5人の仲間とも、同期の深い絆で結ばれました。



アイアンガーヨガは、一つ一つのポーズのとりかたを非常に細かく、そしてとてもシステマチックに指導する特徴があります。普通のフィットネスヨガを想像している人はきっとそのストイックさに面食らうと思います。でも合気道をやっている私には、「ここは肩甲骨を寄せて下げる」みたいなコンセプトはとても馴染みのあるもので、すんなり、いやむしろ積極的に受け入れることができました。また、「ふわっとした説明はせず、具体的に体のどの部分をどう動かすかを指示せよ」という原則があるので、「大地と一体化する自分を感じて・・」などの抽象的な英語ではなく、「feet parallel, thighs roll in」みたいな、理解するのも話すのも比較的簡単な英語で構成されていて、英語学習者としてはありがたかったです。

アイアンガーヨガのもう一つの特徴として、補助器具を多く使うという点があります。ブロックとかベルトとかパイプ椅子とかです。私は当初、体一つで何でもやってみることにこだわりを持っていたのですが、それはとても不毛なことであると実感しました。先生が折に触れて「ヨガは曲芸パフォーマンスや柔軟比べ大会じゃないんだ」と強調しておりましたが、確かにヨガのポーズは上を見ればきりがなく、プロ体操アスリートでもすべてマスターできる感じではありません。もともとヨガは自己の修身のためのものなので、それぞれのポーズで自分が何を感じられるかが重要なのです。
確かに先生を含め、周りのクラスメートも一見柔軟に見えながら、あれ?こんなこともできないのか、と思うところがありました。そもそも基本的に欧米人は正座やあぐらができないです。「合気道は正座で戦う訓練するんだよ。」と言ったらみんな衝撃を受けてました。
手足の長さの違いという、鍛錬で矯正不能なことだけでもかなりの制約があるので、自分の体という与えられた条件でヨガのポーズのもたらす恩恵を享受するために、補助器具はとても重要だということがわかりました。
アメリカは多様性の国で、老若男女、様々な人種の人、様々な身体状態の人がヨガを楽しんでいます。ヨガインストラクターの資格講習にも、たとえば「え?この老人がヨガを教えるの?」とびっくりしてしまうような方々が参加されています。(そういう私も忘れていましたが40代で若いとは言えない歳でした・・・でも全然浮いてないです、多分。) 補助器具があることで、とてもインクルーシブな、一人ひとりのヨガを探求できる仕組みが整っていることは、とても未来志向で、今の世の中にあっていて、すばらしいと思いました。体がとても柔軟で所作が美しい人がヨガを教え、それを目指す人が習うもの、という私の固定概念は覆されました。ますます高齢化し多様化する日本においてもこういう方法論のヨガは将来性があると思います。それを習えてよかったです。

トレーニングは、ポーズの練習、呼吸法の練習、解剖学、ヨガの哲学、指導法の習得など多岐にわたりました。全日程を終え、修了証明書を頂いたときは、感無量でしたし、この集中特訓という熱狂からの卒業に若干の寂しさも感じました。
現在の私は、「全米ヨガアライアンス認定RYT200ヨガティーチャートレーニング修了」という肩書です。入門的なヨガの指導ができます。
今後何かの機会にヨガレッスンをご希望の方はお気軽にお声掛けください。
これからも帰国まで、ヨガは継続的に学んでいこうと思います。

最後に蛇足ですが、私は「ドラゴンボール」で孫悟空がナメック星から脱出して地球に生還する途中で偶然寄ったヤードラットという星で、不思議な技をつかうヤードラット星人と仲良くなって瞬間移動を教えてもらったというエピソードが好きでした。瞬間移動は強力な必殺技ではありませんが、要所要所でよい働きをする優秀支援スキルです。
私もヨガテレポートはまだ習得しておりませんが、修行先のシアトルにてヨガキャラという新しい属性を備え、来年度日本に帰還予定です。お楽しみに!

P.S. 

今、皆様から研究を応援していただくクラウドファンディングプロジェクトを推進しています。こちらもぜひご覧いただき、ご支援をご検討いただけるとありがたいです。 

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