クラウドファンディングへの挑戦(と舞台裏)

講談社ブルーバックスの研究者向けクラウドファンディングプラットフォーム「Bluebacks Outreach」で支援を募っておりましたプロジェクト「人を笑わせ、そして考えさせるモノづくり研究」が先日無事成立し、少しずつプロジェクト実務が回り始めました。
本記事では初めての挑戦であったクラウドファンディングについて、現時点までの体験を共有し、特に研究者の皆さんへ「あなたもやってみませんか」というメッセージをお伝えしたいと思っています。

そもそもクラウドファンディングに挑戦した動機ですが、今年の私は研究者としては海外に出稽古している身で、正直なところ研究資金不足でした。そしてせっかくのサバティカル中なので、いつもとは違う挑戦をして経験を積みたいと思いました。

決意したら、もうやることはシンプルで、
  • プロジェクトの紹介ページを作る 
  • リターン(リワード、返礼品)を設定
  • 募集開始し、宣伝活動。
だけなんですけど、実際にやってみると高度な戦略が求められ、大変勉強させていただきました。

プロジェクトの紹介ページは、「なるべくシンプルにする」ことが重要なようです。今回のわたしのプロジェクトは特定のサービス・モノを提供するものではなく、漠然と「応援してください」というスタイルのものだったので、ついつい理念・理想を熱く(つまり長ったらしく)語ってしまいがちになります。結局それほど短く出来ませんでした。最後まで読んでくださった皆さん、本当にありがとうございます。

リターンについて、ラインナップ設定がものすごく重要です。「商品のようなモノ・サービスを沢山の人に届けたい」、という場合と、「ニッチなコアなファンに届けたい」という場合で、戦略は全く異なると思います。後者にフォーカスがある場合、少額のリターンをたくさんの人に応援してもらう、というのでは目標額を集めることがとても難しいです。他のプロジェクトの成功例を参考にしても、「ものすごく高額だけどコアなファンにとって魅力的」というリターンを用意しておくことが成功の秘訣のように思いました。
たとえばこちらのプロジェクトの最高額500000円のリターン、「修復後の絵巻展覧会にて、解説パネルに〈特別支援者〉としてお名前を表示!&展覧会特別解説ツアー」などは、通常の感覚からすると「これを支援する人いるのかな?」と不安になってしまう一方で、実はコアな歴史ファンにはたまらないプレミア感満載のリターンになっています。実際に3名の方が支援されており、目標額の大半がこの支援により賄われているのです!!

宣伝活動について、わたしの場合はSNS的影響力は心もとないので、Twitter, Facebookでの宣伝とともに、現代ビジネスでタイアップ記事を書く機会を頂くなどして進めました。共同研究者の塚田さんも、函館の地元紙に記事を書いていただいたりしました。


以下のグラフが、募集開始時から締め切り日までの累積支援額の推移です。
とてもわかり易い、初動+最後の1週間の追い込み、という感じの動きです。SNSで支援のお願いをしたり、上記記事を書いたのも、初動のときと最後の1週間の時期で、支援額が伸びた時期と一致しています。メディアでのプレゼンスを高めることはやはり重要なのではないかと思います。

逆に何をしてよいかわからなくてオロオロしていた10日後〜30日後くらいまでの「魔の平地」の時期はやはりドキドキしました。


その他、雑感。

支援額の推移については本当に一喜一憂します。「クラウドファンディングは初動が肝心」と噂には聞いていたのですが、おそらく初動で『これは行ける!』という雰囲気をつくることが大切なのでしょう。我々は初動でうまく進められたのでしょうか?おそらくそうではなかったのではないかと推察します。

やはり直接支援者の皆さんとつながり、応援していただいているという「距離の近さ」を感じます。そのお気持ちに応えなければ、という思いも強く抱きます。普段、税金からなる研究費を使っているとき、ともするとその「支援してくださっている国民の皆様」への感謝の気持ちを忘れがちになってしまいますが、それではいけないな、と気持ちを新たにしました。逆に血税による研究費支援の一部も「ふるさと納税」みたいに対象とする研究領域や研究者を指名することで募集すれば、納税者・研究者ともに距離が近づき、モチベーションが高まり、不正が減り、健全な運用ができるのではないでしょうか。

BluebacksOutreachの担当者の方はとても親身に実務をサポートしてくださり、適切な助言をくださいます。クラウドファンディング初心者にとってとてもありがたいです。事務手数料の割合も通常のクラウドファンディングより安いと聞きました。この手厚いサポートを受けられている対価として、わたしは妥当だと感じます。

応援してくださった皆様、どうもありがとうございます!鋭意研究を進めてまいります!そして研究者の皆さん、この記事を見て、「クラウドファンディング、わたしもやってみようかな」と思ったならば、すぐにでもやってみましょう
参考までに、現時点でBluebacksOutreachで募集期間が終了した7つのクラウドファンディングプロジェクトは、なんと全て目標額を達成しているんです!これはチャンスです。もしかしたら、全くの想像ですけど「なんでもいいけど科学者を応援したいんだよね」というような、太っ腹なパトロンがいらっしゃって、分野横断的に支援しておられるのではないでしょうか!? ありがたいことです!!



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