3/28その2 栗原家の一番長い日(離陸後-シアトル空港)

シアトル・タコマ空港まで、直行便で8時間程度。シアトルは日本からとても近いアメリカと言われています。
経由便を使ったほうが安くあがるんですが、荷物運搬の都合で使いませんでした。
経由便を使うと、最後はだいたいアメリカ国内便でシアトル入りになるんですが、アメリカ国内便の方が、機体が小さいせいか運搬OKな荷物の制限が厳しくなってしまうんです。

そもそもなぜ船便や航空便を用いた引っ越し業者に依頼して身軽にしなかったかというと、ひとえにお金の節約です。何十万円かはかかりますので。サバティカルというのは企業の海外駐在とは異なり、「好きなところに行くのはかまわないから勝手にやって」というような感じですから、所属機関からの多くのサポートは望めません。
それから、妻はミニマリストとまではいきませんが、断捨離的な思想が好きなので、この移住をまたとない大掃除の機会と捉えたようでした。「ダンボール10箱で引っ越すぞ」という私の大号令は、彼女の利害と一致したようです。私たちは持ち家はなく、今回の渡米で完全に住居を引き払いましたから、国際的夜逃げか?と思うような大整理でした。

日本時間の17:00に出発し、太平洋標準時(夏時間)の9:45に到着です。私の基本戦略は、とにかく飛行機に乗っている間すべて寝て、到着後の庶務を元気に乗り切ることでした。そのための準備として、数日前から生活時間を超早寝超早起きにシフトしてきており、この日も朝は2時ごろ起床しています。

私は時差ボケがいつも辛くて海外出張が憂鬱なのですが、昨年12月に下見を兼ねて西海岸を訪れた時、この「何日か前から早寝早起きシフト」を試したら結構うまくいったので今回もそうしました。

こどもたちといえばはじめての飛行機なので機内食も機内エンターテインメントも刺激的だったようで、当然あまり眠れてません。先を考えれば寝てもらったほうがよいのですが、これも大切な体験の一つかと思い、大いに楽しんでもらいました。
でもまあ、離陸後4時間くらいすればいつもの就寝時間なので、その後の2〜3時間は眠れた・・かな?

(末娘は「カメラを止めるな」が好きで、機内でも見ていました。ゾンビ娘です。)

そして着陸。3/28の午後に離陸して、3/28の朝に着陸ですから、栗原家の一番長い一日はようやく折り返し地点です。

私はこれまで1ヶ月くらい、気がつくとシアトルの空港にいて、そこからの正しい立ち回りを強いられるエンドレスループ脱出ゲーム系悪夢(あるいは睡眠学習?)にうなされていました。
毎回バッドエンドで終わっていましたが、さて今こそ真価が試されるときです。

(1)飛行機を降りる
荷物が多すぎなので、乗客の中で一番最後に降りました。
あらかじめ設定しておいた、アメリカ用simカードが私と妻のiPhoneで正常動作することを確認しました。これで連絡をとりあえます。アメリカの電話番号も持てました。ネット検索もできます。インターネットは我が空気☆

(2)入国審査
家族まとめて行いました。いつもはカンファレンスのために1週間、くらいしか喋りませんが、今回は1年の滞在。ビザや重要書類であるDS-2019、必要とあれば履歴書や論文も出すぞという勢いで臨みました。ワシントン大学に滞在かい、桜が綺麗だよ、ちょうど日本で桜を見逃したから見たいよ、などと雑談しました。
指紋とったりして、つつがなく終了。
ここまでで、着陸後1時間くらいです。

(3)荷物受け取り
ここからが難関。
大人二人、子どもは三人いる。アメリカでは子どもだけで放置、あるいは荷物だけで放置することはできない。カートはN個。車輪のついたスーツケースはM個。カートは大人しか運べない。スーツケースは子どもでも運べる。荷物受け取り場所Aから税関Bまですべての荷物と人間を運びなさい。
さてどうしますか?

古典的パズルとして、「子どもと狼を船に載せて子ども全員を川の対岸に渡す。狼の数が子どもの数を上回ると狼が子どもを食べてしまうので避ける」というものが思い出されました。「川渡り問題」っていうんですね。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%9D%E6%B8%A1%E3%82%8A%E5%95%8F%E9%A1%8C
たしかファミコンディスクシステムの「タイムツイスト」というゲームで出てきたような・・

預け入れ荷物10と手荷物5とチャイルドシートを確保し、カートに載せます。ありがたいことに日本語の喋れる職員あるいはボランティアの御婦人たちが手伝ってくれて、税関まで運びました。カートがどのくらい使えるのか、税関までどのくらい離れているのかなどは事前に空港の地図を見てもよくわからなかったので、出たとこ勝負でした。

(4)税関
旅行や出張のときはnoting to declareで素通りしますが、移住では慎重にすすめないといけません。いろいろ調査して、すくなくとも食べ物はものすごく慎重に申告する必要がありそうだったので、準備を進めておりました。
そもそも海外に住むんだから海外の食生活に染まればよいという考えもあります。私も海外の食生活にふれるのはとても楽しみなので、普段の海外出張ならそう考えることでしょう。しかし、子どもも含め家族で長期にわたり海外生活する場合、健康な食生活を維持する上で日本食の体系(食材だけでなく、調理技術、栄養管理技術を含めて)を持ち込むことはほぼ当然なように思いました。主に調理する妻が健康な食生活を構成しやすいように準備するということです。当然、完全和食生活にはしないし、できませんけどね。

何を持っていくべきか、と妻と議論した結果、当座の緊急食としてのアルファ米と、入手が難しいかもしれない「だし」および和食の調味料、好き嫌いの激しい長男のためのお気に入りシリアルなどを厳選しました。

畜産物系の肉のエキスが入っているものは持ち込めないようなので、慌てて渡航直前にいろいろ諦めて実家に置いてきました。(備蓄した「いりごま」にチキンエキスが入っていたのは誤算でした!)「肉」という字がパッケージに書いてあるだけでNGになる、という噂もあったのです。
結果的に、海苔、昆布、鰹節、柚子胡椒などのかなり「しぶい」食材が残りました。
一生懸命関税用書類に申告したのですが(やたらとseaweedがリストアップされた奇妙な海藻一家に見えたことでしょう)、結局リストをチェックされることもなく、ほぼ素通りで拍子抜けです。まあ、ランダム審査もあるようなので、運がよかったと思います。

(5)再度荷物を預けて到着ターミナルへ
シアトルは空港が大きいので、税関のあとで再度荷物を預け、人間は巡回シャトルトレインで移動し、到着ターミナルで荷物を受け取ります。ここでどこまで荷物を預けられて、どこまで荷物を人力輸送しなければならないか未知数だったのですが、だいたいのものは預かってくれたのでなんとかなりました。

(6)レンタカーを借りる
到着口で荷物を再度うけとり、家族を待機させて私はレンタカーを借りに行きました。子どもたちは待合スペースのロッキングチェアーで寝たりゲームしたりしてました。(iPadは偉大です。おとなしくしてくれます。)

シャトルバスで5分くらいのところにあるレンタカー専用施設に到着し、手続きします。使ったのはbudgetという会社です。事前に予約してあったのですが、20分くらいは並びました。
借りたのは、シボレーのsurburbanというとにかくデカイ車です。7人乗りでスーツケースが5個くらい入ります、とだけ説明されていました。
他のレンタカー会社より安くて、1週間レンタルで$500台だったと記憶しています。しかしbudget社は車両保険がこの基本料金に含まれておらず、それを追加すると$800台になり、他の会社とそんなに変わらなかったです。しかし実際に車を見てみたら、ほぼ経験ないアメリカ交通ルールでこの巨大な車を無事故運転できる気がせず、車両保険入って本当によかったと思いました。

「君は運がいいね。この車は新車で、君が最初のドライバーだよ!」とのことです。たしかピカピカの新車です。でもそれは傷つけたらまずい、というプレッシャーにしかなりませんでした。新車なので、自動ブレーキや障害物アラームなどはすごく進んでいて、助かりましたけれども。

(数日後スーパーマーケットの狭い駐車場にこの車をなんとか駐車したら、隣にいたアメリカ人に「こんなデカイ車よく駐車できたね!good job!」って褒められちゃいましたよ。アメリカ人的感覚からもそうなのね、とびっくりしました。)

(7)到着ターミナルで荷物を詰め込んで出発!
おどおどと低速運転をしながら空港到着ターミナルに戻り、家族と合流し荷物の運び込みを開始。奇跡的にも、全ての荷物を詰め込みつつ、家族全員を一度に乗車させることができました。これは本当に嬉しかったです。正直、震えました。私の悪夢系シミュレーションでは、荷物が多すぎて載せられず、私が宿と空港を何往復かするとか、人間はuberに乗せるとか、ありとあらゆるシナリオが考えられたのですが、その中で最良の結末でした。
しかも雨の多いと聞いていたシアトルが快晴。ダンボールも濡れないし、景色は綺麗だし、街が我々を歓迎してくれているようでした。

一番大切なところは乗り切ったので、一旦これで切ります。
栗原家の一番長い日はまだ続きます。

I-5からの眺め。マリナーズの野球場が見えます。



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